富士フイルムの子会社がエボラ出血熱に効果があるというワクチンを提供する用意があると報じられていましたが、この未承認薬を使用して効果があるか早く知りたいですね。
GettyImagesUNDATED: In this handout from the Center for Disease Control (CDC), a colorized transmission electron micrograph (TEM) of a Ebola virus virion is seen. As the Ebola virus continues to spread across parts of Africa, a second doctor infected with the disease has arrived in the U.S. for treatment. (Photo by Center for Disease Control (CDC) via Getty Images)
8月7日(ブルームバーグ):米政府機関はエボラ出血熱の治療に富士フイルムホールディングスのインフルエンザ用治験薬を利用できるよう承認手続きを急いでいる。西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱による死者は過去最悪水準に上っている。
米国防総省のエイミー・デリックフロスト報道官によれば、富士フイルムの米国での提携相手であるメディベクター(ボストン)はこの治験薬「ファビピラビル」をエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、米食品医薬品局(FDA)と協議している。承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通し。
同報道官によると、国防総省はファビピラビルについて、エボラ出血熱に感染したサルでの試験完了を優先させる方針。試験終了後の審査プロセスも迅速に進められる見込みだという。サルを使った試験の暫定的なデータは9月中旬に得られる見通しだとしている。
ファビピラビルは既にインフルエンザ感染者の抗ウイルス剤として治験が重ねられており、エボラ出血熱の治療に適用する上で優位性がある。現在はインフルエンザ治療薬として米国での治験の最終段階にある。
メディベクターの広報担当者に対し、ファビピラビルをエボラ出血熱感染者に適用する可能性について5日に取材を試みたが、コメントは得られなかった。世界保健機関(WHO)は西アフリカでのエボラ出血熱による死者が900人余りに上ったと推計している。
ファビピラビルは富士フイルム傘下の富山化学工業の古田要介氏によって1998年に発見された。国防総省は2012年、ファビピラビルのさらなる開発を後押しするため1億3850万ドル(現在のレートで約142億円)をメディベクターに助成した。富士フイルムは同薬の権利を保持している。
原題:Ebola Drug From Japan May Emerge Among Key Candidates (1)(抜粋)
もはや説明は不要であろう、西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱。事態は日を追うごとに深刻化し、各国でも感染への危機対応が迫られている。8月21日では東南アジアで感染の疑いがある症例がみられたという報告もある。
■スペイン人司祭がエボラに斃れる
「Daily Mail」の記事より 写真はパハレス司祭
感染者の多い国のひとつ、リベリアでエボラ出血熱に感染し、今月初めに本国スペインに軍用機で厳重な管理下の元に搬送され、首都マドリッドにある病院で治療を受けていたカトリック司祭のミゲル・パハレス氏(75歳)は残念ながら先日8月12日に死亡、ヨーロッパでエボラ感染者が亡くなった初めてのケースとなってしまった。
リベリアでは感染者はもはや人としての扱いを受けておらず、現地で宣教活動を行っていたパハレス氏はずっと、リベリアに残した患者のことを心配し続けていたという。
感染が拡大している国や地域では、感染を防ぐ為に軍隊が道を閉鎖し、町同士の往来を禁じている状況である。現地では人々も感染への恐怖とパニックで大混乱となっており、無秩序状態となっている。エボラウイルスの蔓延る西アフリカ諸国の現在の悲惨な状況を英「Daily Mail」が伝えた。
■ギニア、リベリア、シエラレオネと相次ぎ蔓延
170万人もの人々が暮らす、ギニアの首都コナクリ。混雑する道の隅にある水溜まりに突っ伏すように倒れている男性がいる。だが彼には誰一人、警官さえも近づかずに見守るだけである。男性がエボラ出血熱に感染していることを怖れて近寄らないのだ。
その後、男性はエボラ・コントロールセンターに連れて行かれ、隔離されたが…。
ギニア:道路で行き倒れている男性。皆、遠巻きに眺めるだけだ 動画は「YouTube」より
また、リベリアでは、感染により死亡した人々は通りまで引きずられそのまま捨てられている…。冒頭の、亡くなったスペイン人宣教師パハレス氏が述べた通りの、目を覆うような悲惨な状況だという。首都モンロビアは壊滅の危機にあり人々は食料の確保に血眼になっている。
サーリーフ大統領は8月6日から90日間の非常事態を宣言し、「リベリア政府と国民は、国家と人民を守る為非常手段を必要としている」と指摘。また、人々の強固な信仰や長年培った慣習ならびに病気に対しての知識のなさと貧困が感染の拡大を招いているとも述べている。
リベリア: おびただしく出血し、亡くなっている男性。こんな光景が珍しくないという 画像は「Daily Mail」より
シエラレオネでも750名の兵士達が、感染が拡大している地域に対して50日間の隔離政策をとっており、中の住人達と衝突を生み出している事態となっている。通行可能なのは食物と医療品を運ぶ 場合に限られ、全ての学校を閉鎖、住民は公共の場で集まることも禁止されているという。だが住民のデモも続いており、治安上の懸念も高まっている。
たった1人の旅行者から感染拡大
そしてナイジェリアにあるアフリカ最大の都市ラゴス。上記で述べた3カ国と隣接していないこの国でも、ついに犠牲者が出てしまった。
初めて感染による死亡者が出たのは7月25日のこと、リベリアの政府機関で働いていたアメリカ人のパトリック・ソーヤー氏である。氏は旅行でリベリアからナイジェリアへ入国した後、感染の症状で倒れた。氏の手当てをした現地の医療従事者が続けて4人が感染し、そのうちの1人の看護婦も亡くなっている。
現在、現地当局は急ピッチで感染者を隔離する為の場所を確保しようとしているという。ナイジェリアの保健相は会見で「我々は国家の危機に面している、そして世界も危険にさらされている」と述べ、「誰ひとりとして安全な者などいない。我が国は、世界中に強く警告する。今回我が国へ感染をもたらしたのは飛行機で降り立った、たった1人の旅行者だったのだ」と危険を呼びかけた。
ラゴスの多くの住民の家は非常に狭く、水洗トイレのない不衛生な状態で暮らしており、現在市内では道端などの公共の場所で排尿しないようポスターを張り出して注意を喚起している。感染を防ぐ為に念入りに手を洗う市民もいるが、そういった衛生概念を持つ人はまだごく少数だ。
■対策に追われる各国首脳たち
ブリティッシュ・エアウェイズやエミレーツといった主要な航空会社は既に感染者の出ている国々への就航を休止している。現時点でブリティッシュ・エアウェイズはシエラレオネ、リベリア内の全ての都市へのフライトを休止(ギニアへは元々運行していない)、ラゴスには通常通り運行を続けている。
エボラは地球上で最も致死率の高いウイルスのひとつであり、目や口、耳から出血し死に至る。西アフリカは過去何回か、エボラ出血熱の危機にさらされて来たが、280名の死亡者を出した1976年を遥かに上回り、8月16日時点でWHOが発表した感染者は2,240名、死亡者は1,229名(注: 今後は更なる増加の見込み)。
増加する患者数に対して医療従事者、医薬品、手袋やマスクなどの医療品の不足も問題だ。感染の終息には少なくとも半年以上を要するとも言われており、WHOは先日、今回の非常事態に未承認の治療薬の使用を容認する立場を示した。
米オバマ大統領はリベリアのサーリーフ大統領、シエラレオネのコロマ大統領と相次いで電話会談して感染対策を協議。感染封じ込めに向け、支援に全力を尽くす考えを強調している。ユニセフもエボラ対策支援活動を拡大、国連も今月14日に支援要請を発表した。
もしかしたら核兵器や戦争よりも早く、世界中を危機に陥らせるのは目に見えないウイルスなのかもしれない…。今直面している人類共通の脅威として、一刻も早い事態の終息を願う。
(文=Maria Rosa.S)
(文=Maria Rosa.S)
参考:「Daily Mail」、「CNN」ほか