証拠品の現金に手をつけたのが、こともあろうに新設されたばかりの証拠品係だったという大阪府警曽根崎署の窃盗事件。過去3年間相次いだ証拠品をめぐる不祥事を受け、組織改革にまで踏みきり、府警を挙げて適正な管理に努める中で起きた新たな不祥事に、府警幹部からは「言語道断だ」という怒りとともに、「個人の倫理観を高めるしかない」との嘆きも聞かれた。
府警の証拠品の取り扱いをめぐっては、平成24年3月、福島署の警部が強盗強姦(ごうかん)事件で押収したたばこの吸い殻が紛失しているのに気づき、無関係の吸い殻を押収品に捏造(ねつぞう)していた不祥事が発覚。25年6月には堺署で薬物事件の証拠品として保管中だった注射器がないことに気づいた警部補が、無関係の注射器を代用していたことが分かった。
これらを受け、府警は全署で総点検を実施。今年4月からは、刑事課など各課で証拠品を管理していた手法を改め、総務課に新設した証拠品係で一括管理する体制を整えていた。
この「改革の切り札」ともいえる証拠品係に、今回の不祥事を起こした巡査長は所属していた。「高い倫理観を持って働いていたはずだった」。ある府警幹部はショックを隠さない。
再発防止に向け、府警は証拠品の現金を保管する袋を密封するなど新たな対策を検討する。しかし、どれだけ改革を重ねても、新たな制度を運用するのは一人一人の警察官。別の府警幹部は「不祥事の防止は個人の資質に頼る部分も大きい。普段から倫理観を高める努力を続けていくしかない」と本音をもらした。
府警では証拠品係の新設後も、過去の不祥事が次々と明らかになっている。
5月には、池田署で保管していた性犯罪事件の遺留物の紛失に気づいた男性警部補が、無関係の代用品を証拠としていたことが判明。7月には、50代の男性警部補が担当した事件の捜査書類など計3千点以上を自宅に隠し持っていたことが発覚した。
不祥事で新設の係が窃盗
- 証拠品係が証拠盗む 現金抜き取り容疑 大阪府警、不祥事で新設
- 産経新聞(10月18日)
- 男性巡査長が“証拠品の1万円”盗む 大阪
- 巡査長は「金は飲み会に使った」と話していて、警察は近く懲戒処分する予定。 日本テレビ系(NNN)(10月18日)
全警察署に証拠品係
- 大阪府警、全65署に証拠品係 全国初、不祥事防止に
- 府警では近年、捜査員による証拠品の捏造や紛失が相次いだため、管理業務を捜査部門から分離し、不祥事の再発防止を目指す。 47NEWS(2013年11月3日)
- 誤認逮捕再発防止へ 大阪府警が態勢強化 警部増員、証拠品係も設置
- 産経新聞(3月27日)