司法試験の問題を教え子だった女性に漏らしたとして、国家公務員法守秘義務)違反の罪に問われた明治大法科大学院元教授・青柳幸一被告(67)に対し、東京地裁は24日、懲役1年執行猶予5年(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。
 野沢晃一裁判官は「(問題作成にかかわる)司法試験考査委員の立場にありながら、交際していた女性を合格させるため自ら進んで犯行に及んでおり、強い非難に値する」と述べた。
 判決によると、元教授は元大学院生で交際相手だった女性が昨年の司法試験で不合格になったことをきっかけに、漏洩(ろうえい)を決意。今年2月上旬から5月上旬にかけ、女性を研究室に呼び出して繰り返し問題を解かせて指導し、自らが問題作成に関わった憲法分野の短答式(マークシート)試験と論文式試験の問題を教えた。
 判決は、こうした経緯について「試験の公正が害される重要事項についての漏洩で、漏洩の範囲、程度も大きい」と強く批判。「相手は1人で、そこからさらに漏洩した形跡はみられず、採点過程で漏洩が発覚したが、その点を踏まえても重大な犯行だ」と述べた。
 他方で、元教授が事実を認めて反省していることや、失職などの社会的制裁を受けていることなどを考慮し、執行猶予が相当だと結論づけた。
 岩城光英法相は閣議後の会見で「判決で指摘された内容を踏まえ、再発防止に取り組む」と述べた。(高野遼)