「赤ちゃんポスト」を設置している熊本市の慈恵病院や全国の児童養護施設の
施設長、里親などが「現在、児童養護施設にいる子どもたちが差別されかねない」
と「放送の見直し」を求めている日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」。
日本テレビは「放送中止も謝罪もしない」とし、第2話も変更を加えることなく
そのまま放送する姿勢を示してきた。
1月22日(水)午後10時から第2話が放送されたが、
大きな「異変」があった。
提供スポンサーの字幕が番組に入っていなかったのだ。
第1話で、番組タイトルの後に「企業名」が字幕で示され、
「ご覧のスポンサーの提供でお送りします」というナレーションが入ったのは、
Kao(花王)、日清食品、SUBARU(スバル、富士重工)、エバラ(エバラ食品工業)、小林製薬、三菱地所、ENEOS(JX日鉱日石エネルギー)、キューピーの8社だった。
しかし、第2話では、この字幕がなかった。
通常の番組だと必ずある「ご覧のスポンサーの提供です」というナレーションの
部分もなかった。
民放の番組としては、きわめて異例なことである。
富士重工の「スバル」のオフィシャルサイトでは、毎日毎日のテレビの提供番組
がアップされている。
ところが、スバルの公式ホームページで公表する
提供番組の中に、日本テレビの「明日、ママがいない」が
見当たらない。
http://www.subaru.jp/onair/
スバルはこのドラマの提供から降りたのだろうか? それとも表面上、
それを出さないようにしているだけなのだろうか。
テレビ番組の提供スポンサーは1クールごとの契約になるため途中で
スポンサーが降りる、ということは通常はありえない。
まれに、提供スポンサーそのもので不祥事が起きた場合やニュース番組の中で
そのスポンサー企業にかかわる問題がニュースとして放送される場合に
その回だけ、提供スポンサーの字幕を出さないということは起きる。
電力会社が提供するニュース番組で、原発問題を特集する場合などがこれに
当たる。
なぜ提供スポンサーの字幕がなくなったのか?
CMを見る限り、花王やスバル、小林製薬、日清食品、三菱地所など先週の
提供スポンサーとして、登場した会社のCMは流されていた。
だから、これだけでは番組提供を降りたのかどうかは分からない。
ただ気になるのは、通常はこういう時間帯にはほとんど放送されない
公共広告機構(AC)のスポットが数度にわたって流されていたことだ。
東日本大震災の直後に、民放各局では通常のCMを流せる雰囲気ではなくなり、
公共広告機構(AC)のスポットばかりが流れていたことは人々の記憶に新しい。
通常は、深夜や朝などCMが売れていない時間に放送する自社ドラマ
(「戦力外捜査官」)のPRスポットも流れていた。
元テレビマンの経験から分析すると、急にCMに「空き」が出来た場合の
対応だったのだろうかとも思う。
いずれによ、「何らかの異変」があったことは間違いない。
詳細はそれぞれの会社に聞いていみる他はないが、
子どもたちの命を預かっている児童養護施設や里親の団体から放送中止を
求める声が相次いでいるドラマとなっては、
スポンサーとして番組提供から降りたり、あるいは、
当面は、名前を出さないでほしいと要望されたりする
ということは十分にありうる。
万一、1社が降りたとなると、
他の社も雪崩を打つように次々に降りるのが通常だ。
そうなったら、番組の継続は厳しくなってくる。
第2話を見ただけでは、そのあたりは詳しくはよく分からない。
明日以降、新聞社などが取材するだろうから、
そこで真相が明らかになるだろう。
番組の最後に、インターネットでの「この番組は無料配信中」
という字幕を出していたので、番組の継続の意思はまだ強いのだろう。
ただ、児童福祉の関係者が一様に問題視し、
スポンサーがこうした躊躇を見せているのに、
今までと変わらずに放送を継続するとしたら、
テレビの傲慢と言われても仕方あるまい。
事前の取材が甘くて、
関係者を傷つけてしまうような放送をしてしまったなら、
今後はたとえドラマでも実態をちゃんと取材してから番組を制作することだ。