親が子供を怒鳴る弊害r
2014 年 1 月 30 日 17:02 JST
親なら誰しも時には自制心を失い、子供を怒鳴りつけてしまうことがある。しかし、繰り返し子供を怒鳴りつけることに弊害はないだろうか。

Robert Neubecker
親が子供を怒鳴る回数が以前より増えたとする報告書が発表された。世間では平手打ちを避けるよう言われているので、親たちは大声で叫ぶことで怒りやいら立ちを解消している。この報告書によると、親は平均1月に1回、いたずらをしたり怒らせたりしたという理由で10代までの子供に大声を上げている。そしてセラピストや育児の専門家は、このような親の言動が子供をどれだけ傷つけているかを以前より強調するようになり、同時にこうした叱り方をいかにして止めるかを説いている。
大声を上げるのが必ずしも悪いわけではない。親業トレーナーのアデル・ファーバー氏は、大きな声で問題点を説明すれば誰も傷つけずに注意を喚起することができる、と語る。ただし「どうして覚えられないの」、「あなたはいつもここを間違えるのね」といった一言で子供を個人的に攻撃したり、けなしたり、責めたりすれば、子供の心を大きく傷つけることになるという。
多くの親は子供のいたずらや反抗的な態度を自分に対する当てつけと受け止めてしまうために自制心を失う。今月発行の心理学専門誌、家族心理学ジャーナルによると、子供の否定的な感情を予想外で手に負えないものと考える親は、わき出てくる感情に恐怖感やいらだちを覚えることが多い。「情動の氾濫」と呼ばれるこうした症状は親子関係に悪循環をもたらす。親の問題解決能力を弱め、叫んだり怒鳴ったりという感情的な反応をあおることになる。
ピッツバーグ大学で心理学・教育学を専門とするミンテ・ワン准教授が主導して中間層の若者とその親976人をアンケート調査したところ、親に「とげとげしい言葉」でしつけられた10代の若者は、そうでない若者より行動障害やうつ病といった症状に陥りやすいことが判明した。この調査結果は昨年9月にネット上で公開された。
また別の調査は、子供を平手打ちするより怒鳴る方が後々悪い結果を招く、と指摘する。ブラウン大学で精神科と人間行動学を専門とするステファニー・パレード准教授が8歳児を15年間にわたって追跡したところ、親に怒鳴られてしつけられた子供は23歳になったとき、そうでない子供に比べてパートナーや配偶者と幸せな関係を築けていないことが多かった。パレード准教授は「怒鳴る親は子供に感情の調整方法を教えそびれているかもしれない」と語る。
平手打ちも子供が大きくなったときの人間関係に好ましくない影響を与えるが、他のときに子供をほめれば平手打ちの弊害は解消される一方、怒鳴った後に親が愛情を注いでもその弊害は消えないという調査もある。2010年発行の結婚&家族レビューのリポートによると、親に怒鳴られて育った子供は、大人になっても怒鳴られたたときに会得した後ろ向きの問題解決方法に固執する傾向がある。他人が自分に不当に扱うと予想し、その上、無意識にそうした相手を選んでしまう、という。
親は感情が爆発する前にその気配に気付き、緊張を緩める方法を学ぶべきだ。爆発の兆候としては、喉や胸の圧迫感、浅く速い呼吸、歯やあごの緊張、自分についての否定的な考え、圧倒される感じが挙げられる。

Robert Neubecker
そうしたときには深呼吸をしたり、愉快な情景を思い浮かべたり、10まで数えたり、部屋を出て行ったりすると、気持ちが落ち着く。親の怒りについての「She's Gonna Blow(仮題:彼女は爆発する)」の著者、ジュリー・バーンヒル氏は、「今日は惨めな一日だったけれど、ここで怒ればもっと惨めになる」と考えることで自分を落ち着かせるよう助言する。
「No More Perfect Moms(仮題:もはや完璧な母親はない)」の著者、ジル・サビジ氏は、牛乳をこぼしたりジャケットをなくしたりといった小さな不運の克服に毎日一定の時間を充てるよう勧める。「夕食後の後片付けの時間が20分あれば、私はこぼれた牛乳を片付けるわ」と語る。
ファーバー氏は、子供に話しかけるとき、主語を「あなた」から「私」に変えることを学べば怒りの攻撃が教育の時間に変化する、と語る。「最初にあなたが嫌なことを告げ、次にあなたが好きなことや期待していることを伝えるのです」。
サビジ氏は、多くの親は子供に非現実的な期待をしているために爆発してしまう、と指摘。「子供たちには"年相応の振る舞いをしなさい"と言い、彼らはその通りにしている」。子供に完璧を求めなければ欲求不満にはならないはず、と語る。そうすれば子供の失敗を子供の学習機会と見なせるようになる。
ファーバー氏は、親と子供が一緒に解決策を考えることで、とんでもない事態が教育のきっかけになる、と語る。彼女によると、気持ちが落ち着くのを待って子供が犯した規則について説明する。その後に、どうすれば今後良くない行いを避けられるか、を指導する。子供を巻き込んで解決策を考えれば問題解決能力を養うことができる。
バーンヒル氏は、感情を爆発させてしまっても後で謝れば親子関係を修復できる、と語る。彼女自身、娘が10代のときに、その数年前に感情的になったことを謝罪した。娘に「あなたを怒鳴ったのを覚えているわ。本当にごめんなさい。愛しているわ」と伝えた。
娘のクリステン・ドローガンさん(25)は、怒鳴られたことを覚えていなかったけれども母親に謝られて涙が出た、と回想する。「母が私の気持ちを大切にしてくれていることがわかったから」だという。